基礎知識

歯科医師は医療アートメイクができるのか?リップへの対応と歯科ならではの強みをご紹介

唇の色味や輪郭を整えるリップアートメイクは、近年ますます注目を集めています。実は、歯科医師がリップアートメイクを行うケースもあり、口元の専門家だからこそ発揮できる強みが存在します。

本記事では、歯科医師がリップアートメイクに対応できる理由と、リップ施術で期待できるポイントについてご紹介。口元の美しさも安心と一緒に叶えたい方は、ぜひ参考にしてください。

このコラムを読んでわかること

・医療アートメイクにおける歯科医師の法的立場と、リップ施術が慎重に扱われる理由を理解できる。

・歯科医師がリップアートメイクに関わる意義や、歯と唇のバランスを整える専門的な視点がわかる。

・歯科の知識を活かした自然で安全なリップデザインや、衛生管理・色素選びの重要性が学べる。

・歯科医療と美容医療の連携によって生まれる「口元美医療」という新しい可能性を知ることができる。

歯科医師は医療アートメイクをしていいのか?

  • 法律上の立ち位置と、歯科でできる範囲のリアル

    医療アートメイクは、医師免許を持つ者やその指示のもと看護師・准看護師が行うことができる医療行為です。厚生労働省により、針を用いて皮膚に色素を注入する行為のうち、毛髪や眉毛などの本来人体に存在しているものや、アイライン・リップといった化粧の代わりになるものを描く行為は医業に該当する、と明記されているためです。

    歯科医師も医師免許保持者ですが、歯科医師法では「歯科医業」の範囲が定められているため、原則として歯や口腔内の疾患治療が専門領域です。そのため、眉やアイラインといった顔面の医療アートメイクは、歯科医業の範囲を超えると判断されても不思議ではありません。

  • 唇(リップ)への施術が慎重に扱われる理由

    リップへの医療アートメイク施術は、唇が非常にデリケートな部位であるため慎重に扱われます。唇は皮膚が薄く痛みを感じやすいため、麻酔を使用しても痛みが強く出る場合があります。

    施術直後に軽度の腫れが見られるものの、ほとんどの場合は数時間後から翌朝までに落ち着き、翌日以降には目立たなくなります。体質や当日のコンディションによっては腫れの引きに個人差がみられるため、施術前後は無理のないスケジュールで過ごすことが望ましいでしょう。さらに、施術後の唇は傷がついた状態になるため細菌感染のリスクが高く、過去に口唇ヘルペスがある方は再発の可能性もゼロではありません。予防薬の服用や、衛生管理が徹底できる環境での施術が不可欠です。

  • 歯科で医療アートメイクを導入している実例と背景

    実際に一部の歯科や口腔外科では、リップアートメイクを提供しています。導入背景には、市場での需要増加があげられます。ホワイトニングや矯正治療を受けた後、唇の色や形も整えたいという声は少なくありません。

    歯科医師は口腔周囲の解剖学的知識を持ち、神経や血管の走行(通り道)を熟知するプロです。この専門性を活かして、安全性の高いリップアートメイクを提供できる可能性は高いといえるでしょう。

なぜ歯科でリップアートメイク?その専門性と役割を読み解く

歯科医師がリップアートメイクに関わる意義は、単なる美容目的にとどまりません。口元の見た目と機能の両方に働きかけられる点が大きな特徴です。ここでは、歯科ならではの視点で、リップアートメイクを捉え直してみましょう。

  • 唇と歯のバランスを整える

    美しい笑顔の条件として、歯と唇の調和は欠かせません。歯を白くしても唇の色がくすんでいれば、口元全体の印象は半減してしまいます。

    歯科医師は歯の位置や形だけでなく、唇のボリュームや色味まで考慮し、自然な笑顔のバランスを設計できるプロです。たとえば、矯正後に口元の印象をさらに整えたい方、セラミック治療とあわせて唇の美しさも追求したい方にとって、同じクリニックでまとめて相談できる点は大きなメリットといえるでしょう。

  • 咬合・筋肉・笑顔ラインを踏まえた自然なリップづくり

    唇の動きは表情筋と密接に関係しており、笑ったときの口角の上がり方やリラックス時の唇の形も、咬合や筋肉のバランスによって大きく左右されます。

    口元の動きを日常的に診ている歯科医師は、咬合診査や筋機能評価を通じて患者さんごとの表情の癖や筋肉の使い方を把握しています。これらの専門知識は、リップアートメイクのデザインにも活かせます。たとえば、口角が下がりがちな方に対して、視覚的に口角を持ち上げて見せるラインの提案が可能です。

  • 美容目的だけでなく「機能美」を重視する歯科的アプローチ

    口元の美しさと機能性を両立させるためには、歯の色や形、歯並び、歯ぐきのラインといった細部まで総合的に整えなければなりません。このような美しさと機能性の両立を目指すのが、審美歯科という歯科医療の分野です。

    ここに医療アートメイクを組み合わせると、唇の色味や輪郭を整えながら自然で健康的な口元が演出できます。歯科的視点から見た口元全体の調和をワンステップで叶えられる点は、歯科ならではの特徴といえるでしょう。

歯科視点で見直す「リップアートメイクの質」

リップアートメイクの仕上がりを左右するのは、デザインセンスだけではありません。口腔周囲の解剖学的知識や衛生管理の徹底が、安全で自然な結果をもたらす鍵です。続いては、歯科医師が持つ専門性が、どのように医療アートメイクの質を高めるのかみていきましょう。

  • 歯の見え方・口角の上がり方を意識したデザイン

    笑ったときに見える歯の範囲や口角の動きは、人それぞれ異なります。歯科医師はお客様の笑顔を多角的に観察し、どの表情が最も魅力的かを判断するスキルを持っています。

    リップアートメイクでも、自然な笑顔の時に歯とのバランスが最適になるよう、ラインの引き方や色の濃淡を細かく調整してもらえるでしょう。

  • 粘膜に近い自然な色素選びと清潔環境の維持

    唇は皮膚と粘膜の中間のような特殊な組織であり、医療アートメイクで使用する色素選びには慎重な判断が必要です。しかし、歯科医師は日頃から口腔粘膜を扱っているため、唇の組織に適した色素や、自然に定着しやすい色素を見極める知識を持っています。

    また、唾液や口腔内の細菌に触れる可能性も考慮し、感染予防の面からも安全性を重視した施術が可能。さらに、歯科医院は衛生管理において大きな強みがあります。日常的に滅菌器具を使用し、徹底した感染対策を行っている環境は、安心できるポイントといえるでしょう。

  • 矯正・ホワイトニングとの相乗効果

    歯列矯正やホワイトニングを受けた後、口元全体の印象をさらに高めたいと考えている方は多いはずです。歯科医院でリップアートメイクまで対応できれば、一貫したケアが可能になります。

    特に、矯正治療で歯並びが整うと笑顔のラインも変化するため、治療後の新しい口元に合わせてリップデザインを最適化できる点は歯科医師ならではの視点と言えるでしょう。

歯科から始まる“口元美医療”という新しい提案

歯科医療の領域が、審美性と機能性を融合させた新しい価値を生み出しつつあります。リップアートメイクはその象徴的な施術のひとつです。最後に、歯科医師の専門性を活かした口元ケアの可能性を、未来の視点から考えてみましょう。

  • 審美歯科・ホワイトニングとの連携で広がるケアの幅

    審美歯科ではセラミック治療や矯正、ホワイトニングといった施術が一般的ですが、これらに加えてリップアートメイクが選択肢に入れば、満足度は一段と高まるでしょう。

    たとえば、セラミック治療で前歯を整えた際、同じクリニックで唇の形や色も相談できれば通院の手間が省けます。治療計画の段階から口元全体のイメージを共有できるため、歯と唇の仕上がりに統一感が生まれやすくなるでしょう。

  • リップアートメイクを“歯科発の美学”として確立する

    美容医療の多くは見た目の変化を第一目的としますが、歯科医療は機能回復を重視しながら審美性を追求してきた歴史があります。

    リップアートメイクを「歯科発の美学」として位置づければ、単なる美容施術とは一線を画す価値が生まれます。口腔機能との調和を保ちながら自然で健康的な美しさを目指すこのアプローチは、歯科医療の強みを活かした新しい選択肢といえるでしょう。

  • 美と機能をつなぐ、これからの口元医療のかたち

    医療と美容の境界は徐々に曖昧になりつつあります。特に口元に関しては、「食事・発音・表情」といった機能面と見た目の美しさが、密接に関わり合っています。

    歯科医師が持つ解剖学的知識や口腔機能への深い理解は、美容施術の質を底上げする大きな可能性を秘めています。リップアートメイクを起点として、今後は歯科医師と美容医療の医師が連携しながら、それぞれの専門性を活かした口元ケアが広がっていくかもしれません。

まとめ

歯科医師によるリップアートメイクは、口元の専門知識を活かした安全で自然な仕上がりが期待できます。唇と歯のバランス、噛み合わせ、表情筋の動きまで考えたデザインは、歯科医師だからこそできる施術です。

見た目だけでなく機能面も重視する歯科のアプローチが、これからの口元美容の新しいスタンダードになるかもしれません。リップアートメイクを受ける際は、施術者の資格や専門性を確認し、信頼できるクリニックを選びましょう。

Q.歯科でリップの医療アートメイクは対応できる
A.対応できますが、すべての歯科医院で行っているわけではありません。リップアートメイクは医療行為にあたるため、医師または医師の指示を受けた看護師・准看護師・歯科衛生士が施術する必要があります。歯科医師も医師免許を持っているため、施術可能です。ただし、リップアートメイクに対応しているかはクリニックによって異なるため、事前に確認しましょう。
Q.初回から完成までの来院回数と間隔はどのくらい
A.基本的に2回以上の施術が必要で、唇の色素沈着が強い場合は3回行うケースもあります。初回と2回目の間隔は、肌の回復と色素の定着を待つため1ヶ月半〜2ヶ月程度空けましょう。完成後も、きれいな状態を保つには1〜2年ごとのリタッチがおすすめです。

国際美容医療アートメイク協会が運営するアートメイクスクール
IMAA事務局 広報チーム
執筆者
IMAA事務局 広報チーム

本コラムでは、皆さんに役立つ医療アートメイクに関する情報をお届けします。基礎知識から最新のトレンド情報のみならず、医療アートメイクには不可欠な眉デザインの上手な描き方やメイクアップ方法など幅広く発信します。