- 基礎知識
医療アートメイクとは?エステや自宅サロンのアートメイクとの決定的な違い
「眉が薄くてすっぴんになると顔が変わりすぎてしまう」
「すっぴんは誰にも見せたくない……」
「メイクに時間がかかりすぎて面倒」
このような悩みを解消してくれるのが、医療アートメイクです。医療用の針を使って、気になる部分に色素を注入するため、洗っても落ちません。
眉やアイライン、リップなど、顏の印象を左右する部分への施術は人気です。
医療アートメイクは、有資格者のみしか施術できません。しかし、今はエステサロンや自宅サロンなど無資格者が施術しているケースもあるため注意が必要です。
この記事では、医療アートメイクについての基礎知識や主な施術メニュー、エステや自宅サロンとの違いなどを解説します。
大前提:アートメイクは『医療行為』に該当する
医療アートメイクは、皮膚の浅い部分に医療用の針を使って傷をつけて色素を注入します。タトゥーに比べると痛みは少ないですが、麻酔を使用して施術するケースも少なくありません。そのため、医療アートメイクは立派な医療行為に該当し、医師免許が必要です。
無資格者が患者様に医療アートメイクを施した場合は医師法違反に触れ、しかるべき処置を取られることもあります。
医療アートメイクは、正確な知識や技術を兼ね備えていない方が施術するのはとても危険な行為であると認識しておきましょう。
医療アートメイクの施術者になれるのはこんな人
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医師免許を持つ人
基本的に、医師免許を持つ方は医療アートメイクの知識と技術を身に着ければ施術者になれます。
痛みが我慢できない患者様には、麻酔を使用することも少なくありません。麻酔は、正しい知識を持っている医師が使用しないと危険であるため、医師免許が必ず必要です。医師免許を持つ方であれば、肌表面に麻酔クリームを塗る表面麻酔だけでなく、注射針による麻酔も使用できるため幅広い患者様への対応が可能となります。
なお、医療アートメイクの施術に必要な針や色素を購入できるのも、医師免許を持つ方のみです。
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看護師・准看護師免許を持つ人
医師免許ではなく、看護師・准看護師の免許を持つ方も医療アートメイクの施術者になれます。実際、患者様に施術しているのは医師ではなく看護師・准看護師であるケースも多いです。
ただし、保健師助産師看護師法37条により「医師の指示を受けなければ医療行為をしてはならない」と定められているため、必ず医師が常駐している医療機関で施術することが条件となります。
また、医師が常駐していないにもかかわらず、患者様に医療アートメイクを施したり麻酔を使用したりするのは医師法に触れるため注意しましょう。
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歯科医師
歯科医師も医療アートメイクを施せますが、口腔領域のみと施術範囲が限られています。そのため、歯科医師免許を持つ方は唇など口元のみの医療アートメイク(リップアートメイク)なら施術可能です。
エステや自宅サロンでアートメイク施術を行うリスク
医療アートメイクは、医療行為とされているにもかかわらず、エステや自宅サロンなどで受けられるところも少なくありません。エステや自宅サロンには、医師免許を持つ方がいない場合もあり、無資格者が医療行為をしているケースもあります。
医療アートメイクが医療行為であることを知らずに無資格者の施術を受けてしまった患者様も多く、健康被害を訴える方も少なくありません。
ここでは、エステや自宅サロンで医療アートメイク施術を行う場合に考えられる2つのリスクを見ていきましょう。
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法律違反に該当する
医療アートメイクは、以下の医師法第17条で定められている医療行為です。
・針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為
引用元:医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(◆平成13年11月08日医政医発第105号)よりそのため、医師免許や看護師・准看護免許、歯科医師免許を持つ方以外は施術できません。また、施術を行える場所も医療機関内と定められています。
一概には言えませんが、クリニックや歯科医院など、医師が常駐している医療機関以外の医療アートメイクは、基本的に違法であると認識しておきましょう。
現在、エステや自宅サロンにて無資格者が医療アートメイクを行っている違法サロンは残念ながら存在しています。違法サロンは法律違反に該当し、あらゆるトラブルに巻き込まれることが想定できるため、医師名を掲げていないエステや自宅サロンは避けましょう。
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人に危害を加えてしまう可能性がある
医療アートメイクは、正しい知識と技術を持って施術しなければならない医療行為です。そのため、医師免許や看護師免許などのない無資格者がやり方を間違えて施術してしまうと、大きな危害を加えてしまう恐れがあります。
特に、目元や口元といったデリケートな部分に施す場合は、有資格者でも経験が浅いと注意する必要があるほどです。
消費生活センターによせられる医療アートメイク関連の苦情や相談は、基本的に無資格者が施術している違法サロンなどの無認可で営業しているところがほとんどです。独立行政法人国民生活センターによると、2006年からの5年間で121件もの苦情が寄せられていることが分かっています。
被害内容は、施術部位の化膿や角膜への傷、痛みと腫れが治まらない、眉毛の形がおかしくなってしまったなどです。これらは日常生活を送るうえで、大きな負担になり不安も募ります。
安全に医療アートメイクを行うためにも、エステサロンや自宅サロンでの施術は避けましょう。
医療アートメイクの施術メニュー
主な医療アートメイクの施術メニューは、眉やアイライン、リップが挙げられます。他にも施術可能な部位はあり、各クリニックによっても受けられるメニューは異なるため、事前の確認が必要です。
メイク時間の短縮や眉の形を定着させたい、唇の色を良くしたいなど、希望に合わせてクリニックを選びましょう。
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眉
眉は、医療アートメイクのなかでも人気の高い施術部位です。医療アートメイク初心者の方でも、アートメイクと聞けば眉を連想する方も多いでしょう。
眉は、目元だけでなく顏全体の印象を左右するため、メイクでも時間をかけて仕上げる方が少なくありません。眉の手入れも欠かさず、こまめに行っている方もいるでしょう。
仕上がりのイメージによって、眉の形も変わってきます。キレイな雰囲気か可愛い雰囲気かでも、形を変えていく必要があるため、カウンセリング時によく相談することが大切です。
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アイライン
日頃のメイクでも、アイラインは欠かさず引く方は医療アートメイクを検討すると手間が減るのでおすすめです。すっぴんでも、アイラインさえ引いてあれば目力のある印象的な顏を演出できます。
アイラインは、引き方によっても顏の印象を変えるものです。眉と同様、仕上がりの希望をカウンセリング時に伝えて決めていきましょう。
基本的にはまつ毛とまつ毛の間を色素で埋めていくため、すっぴんでも自然な目元を残せます。アイメイクの失敗を防ぎ、メイクの時間短縮にもなるため検討してみましょう。
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リップ
リップの医療アートメイクは、唇の色や形を変えることができます。唇のくすみや色が薄く悩んでいる方は、医療アートメイクで色素を入れることで改善されるのでおすすめです。
唇の色が鮮やかになるだけで、疲れた印象がなくなり肌も明るく見えます。唇の色は、肌に合わせて選ばなければ違和感のある仕上がりになることも。カウンセリング時には、唇と肌の色がマッチするリップカラーを選びましょう。
また、口角が下がっている方も医療アートメイクで調整できます。口角の上がった、若々しい印象を目指しましょう。
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ヘアライン
ヘアラインの医療アートメイクは、頭髪用のインクを使って頭皮に色素を入れて生え際の毛髪のような毛流れを描くものです。生え際のデザインを変えることができるため、元々ある毛髪の流れに合わせて馴染ませます。
おでこの広さを調節することで小顔効果が得られるため、顏の大きさで悩んでいる方におすすめです。また、前髪の透け感が減り毛量が増えたように見えるため、若々しい印象へ変化します。
施術できる範囲は、概ね生え際から1cm以内となり、大幅に額側に伸ばすことはできません。
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傷跡・妊娠線カバー
体や顏にある隠したい傷跡や妊娠によりできた妊娠線などを、医療アートメイクでカバーすることもできます。気になるところに、肌色になじむ色素を注入することで自然に目立たなくさせる施術です。
まだ日本では新しい医療アートメイクであるため、施術できるクリニックは多くありません。ですが、傷跡や妊娠線、肉割れ線などにコンプレックスを抱いている方は前向きに検討してみる価値のある施術だと言えるでしょう。
医療アートメイクのよくある3つの誤解
医療アートメイクについて、誤った認識を持っている方は少なくありません。今回は、よくある3つの誤解について解説します。
正しい認識の元、医療アートメイクの施術を検討しましょう。
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永久に持続する
医療アートメイクの持続期間は、永久ではありません。タトゥーのように皮膚の深い部分ではなく浅い表面部分に色を入れるため、肌のターンオーバーによりおおよそ2〜3年すると徐々に色が薄くなっていきます。
そのため、メイクの流行りや年齢による顔つきや好みの変化などに合わせて、柔軟に対応していく必要があるでしょう。
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施術時の痛みはない
医療アートメイクは、表面麻酔や注射による麻酔を利用できるため、ほとんど感じないものとされています。しかし、麻酔の効き目や痛みの感じ方などは個人差があるため、全ての方が痛みがないとは言い切れません。
医療アートメイクは、皮膚に専用の針を使って傷をつけてインクを注入するものなので、痛みを感じる方もいるでしょう。とはいえ、麻酔により緩和されているため我慢ができないレベルではありません。
施術中、痛みに耐えられなくなった場合は、麻酔を追加してもらえないか施術者に相談してみましょう。
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MRIが受けられなくなる
医療アートメイクをしていてもほとんどの場合でMRI検査は受けられます。しかし、MRI検査中に医療アートメイクを施した部分が火傷してしまうことや検査画像の乱れが起こる可能性はゼロではありません。
火傷の原因は、医療アートメイクの色素に含まれている酸化鉄(金属)が熱を帯びることが挙げられます。MRI検査は電磁波を使っているため、酸化鉄に反応してしまうためです。
とはいえ、医療アートメイクの色素は皮膚のごく浅い部分までしか入っていないため、火傷も軽症に留まることが多くなっています。しかし、アイラインの医療アートメイクを上下に入れている場合は注意が必要です。MRIの性質上、円形の色素には誘導電流が発生しやすいため、アイラインを上下に入れている方が目を開けると火傷のリスクが高まります。MRI検査中は目を閉じ、何か異変が起きたらマイクや手元にあるスイッチで知らせましょう。
検査画像の乱れに関しては、ほとんどの場合において病気の診断に影響を及ぼす程ではありません。ただし、MRI検査前の問診では忘れずに医療アートメイクをしていると申告しておきましょう。
医療アートメイクに関するよくある質問
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Q.眉毛アートの後にエステはできますか?
A.医療アートメイク施術後、約2週間は期間をあけるようにした方がよいです。
炎症や感染リスク等を起こさないように観察する事が必要です。 -
Q.眉毛サロンでの施術は違法ではないのですか?
A.厚生労働省が2001年より健康被害が相次いだことを受けて、医療用の針を使用し傷をつけて色素を入れる行為は医師免許が必要となりました。
施術には医師免許が必要となるため、免許なしでのサロンでの施術は違法となります。
まとめ
医療アートメイクは、医師免許や看護師免許などを持つ有資格者のみが施術できる医療行為です。エステサロンや自宅サロンでは、無資格者が施術しているケースも多く、医師法に触れていたり危害を受けたりする恐れがあるため避けましょう。
眉やアイライン、リップ、ヘアライン、傷跡、妊娠線など、顏や体の悩みを解消へ導いてくれるのが医療アートメイクです。正しい知識と技術を持つ医師や看護師のいるクリニックにて、安全性の高い施術を受けてくださいね。